アーシェ18歳 ウォースラ37歳

※少しウォースラ×アーシェ風味です。ご注意ください。

閉じ籠った空間で過ごす日々に、何時からか日にちを数えるのも億劫になっていた。

父も夫も亡くなり、信頼していた騎士に裏切られ。
それでも国を取り戻す為と生かされ続けている。
この闇の中で。
そんなもの、取り戻せるのか。
本当に欲しいものはもう戻ってこないのに。


「殿下。只今、戻りました」

私は虚ろげに目の前で開いた扉を見た。

「あなた、帝国から狙われてるんでしょ?外でウロウロしてていいの?」
「私の事はお気になさいませぬよう」

彼、ウォースラがその場で跪く。
今や私の側には彼しか居なかった。 ここを動くことが出来ない私は、身の回りの物を揃えるにも彼に頼るしかなかった。 それがどんなに大変なことか、などと考える気力も私からは失せていた。 何故、何もかも無くした小娘にこの男は甲斐甲斐しく世話するのか。

ふとある思いが頭を過った。
私はこのとき、どうしようもなく心を病んでいたのだろう。

「ウォースラ、側に来て」

私が手招きすると、彼は少し戸惑った後、少し近付いて跪く。 城で過ごしていた頃は、一騎士であった彼とこんな距離で過ごしたことはない。
とくに、私が成長して結婚するような歳になってからは。

「ねぇ。こんなところで閉じこもってばかりで身体が変になりそうなのよ。 …慰めてくれるでしょう?」

あなたも自由の利かない身体を持て余しているハズよ、と囁き、身を寄せようと彼の手を取った。 そのまま彼の唇に自分のそれを重ねようとしたとき、彼が私の肩をぐっと押さえた。

「アーシェ殿下…。今はお辛いでしょうが、どうか堪えてください」

ウォースラの痛みを堪えるような声にはっとなる。
私は何をしているのだろう。自分ばかりが不幸だと思いこんで。 ここに誰より自分を案じてくれている人がいるのに。

「ごめんなさい…!!」

自分の情けなさに震えがきて、鼻の奥がつん、と痛む。

「ウォースラ、少しだけ胸を貸して」

震える声で言う。彼がそっと私の背に手を添える。
私はその胸の中で慟哭した。


泣くだけ泣いた。悔やむだけ悔やんだ。
後はもう、取り戻すだけだ!


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