※少しウォースラ×アーシェ風味です。ご注意ください。
閉じ籠った空間で過ごす日々に、何時からか日にちを数えるのも億劫になっていた。
父も夫も亡くなり、信頼していた騎士に裏切られ。
それでも国を取り戻す為と生かされ続けている。
この闇の中で。
そんなもの、取り戻せるのか。
本当に欲しいものはもう戻ってこないのに。
「殿下。只今、戻りました」
私は虚ろげに目の前で開いた扉を見た。
「あなた、帝国から狙われてるんでしょ?外でウロウロしてていいの?」
「私の事はお気になさいませぬよう」
彼、ウォースラがその場で跪く。
今や私の側には彼しか居なかった。
ここを動くことが出来ない私は、身の回りの物を揃えるにも彼に頼るしかなかった。
それがどんなに大変なことか、などと考える気力も私からは失せていた。
何故、何もかも無くした小娘にこの男は甲斐甲斐しく世話するのか。
ふとある思いが頭を過った。
私はこのとき、どうしようもなく心を病んでいたのだろう。
「ウォースラ、側に来て」
私が手招きすると、彼は少し戸惑った後、少し近付いて跪く。
城で過ごしていた頃は、一騎士であった彼とこんな距離で過ごしたことはない。
とくに、私が成長して結婚するような歳になってからは。
「ねぇ。こんなところで閉じこもってばかりで身体が変になりそうなのよ。
…慰めてくれるでしょう?」
あなたも自由の利かない身体を持て余しているハズよ、と囁き、身を寄せようと彼の手を取った。
そのまま彼の唇に自分のそれを重ねようとしたとき、彼が私の肩をぐっと押さえた。
「アーシェ殿下…。今はお辛いでしょうが、どうか堪えてください」
ウォースラの痛みを堪えるような声にはっとなる。
私は何をしているのだろう。自分ばかりが不幸だと思いこんで。
ここに誰より自分を案じてくれている人がいるのに。
「ごめんなさい…!!」
自分の情けなさに震えがきて、鼻の奥がつん、と痛む。
「ウォースラ、少しだけ胸を貸して」
震える声で言う。彼がそっと私の背に手を添える。
私はその胸の中で慟哭した。
泣くだけ泣いた。悔やむだけ悔やんだ。
後はもう、取り戻すだけだ!
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