辺りが暗闇になる頃。
夕食を終えると騎士団の面々はそれぞれ寮に戻ったり買い物に出掛けたり、自由な時間を過ごしている。
朝から夕方まで規則正しい生活をしていく中で唯一騎士達が自分の時間を過ごせるときだ。
私はそんな時間に邪魔をして申し訳ないと思いつつ、ある人物を探していた。
騎士団内の訓練室を覗くと彼はそこにいた。
「バッシュ!!」
素振りをしていた彼は、私の声に驚いて振り向く。
「殿下!このようなむさ苦しいところへ…」
「いいの。きっとここにいるだろうと思ってきたから」
近付く私に彼は汗をふきふき、言った。
「私に何か御用でしたら、こちらから赴きましたのに」
「ここでいいわ。あなたにお願いがあるの。私にも剣を教えて頂戴」
なんでしょうか、と聞くその目を正面から受け止め、きっぱり真剣な目をして言った。
「…何故、そのようなお考えになられたのですか?」
「分かってるでしょうけど、今こうしている間も帝国はどんどん強大になっていくわ。
いつか、この国にも手を伸ばすかもしれない。
そうなったとき、ただ守られているだけじゃイヤなの。
…せめて自分を守れるだけの力が欲しい。お願いよ、バッシュ!」
バッシュはじっと私の言葉を聞いてくれた。
「殿下は美しくなられただけではなく、強く聡明になられました」
彼は目を細めて言った。
「チョコボに乗せて欲しいとせがまれた頃がつい最近だと思っていたのですが…」
「バッシュ…」
私は幼い頃、無理を言った自分を思い出し、頬を染めた。
「我ら騎士団、殿下を心配させてしまう程、脆弱でございますか?」
「いえ、そんなこと!皆がよくやってくれてるのは分かってます。
勝手を言ってごめんなさい。ただ…何もできず守られるばかりの自分が歯がゆいの」
拳を握って力説する私を見て、バッシュが深く溜息を吐いた。
「私からは剣をお教えすることはできません」
「…何故?」
頭を下げて言う彼に私が静かに問うと、彼はゆっくりと語りだした。
「殿下も御存じの通り、私は元々この国の人間ではありません。
祖国ランディスで兵をしていたときに培った剣技に自分のアドリブを混ぜた邪剣なのですよ。
正しい技を覚えたいとおっしゃるなら、ウォースラに師事した方が宜しいでしょう」
バッシュはそう言って苦笑いした。
「だからこそよ!」
私はバッシュに詰め寄る。
「帝国に踏みにじられても剣を振るい続けたあなたの剣は、無くすものの辛さを乗り越えてきたもの。
戦争を経験したからこそ、あなたの剣は語り、この国の将軍にまで上り詰めたのでしょう?
私はだからこそ、あなたに教えて欲しいのよ」
お互いの視線が交錯する。
ふ、と視線を外したバッシュは買い被りすぎです、と溜息を吐いた。
「なにから…始めましょうか?」
「ありがとう、バッシュ…」
戸惑いがちに見つめるバッシュに私は静かに答えた。
その後こっそりとバッシュに剣を教わることとなる。
普段忙しいバッシュの手を煩わせない程度だけれど。
彼の剣に触れ合うと彼の強さが剣を通じて伝わってくる気がした。
彼の、心の強さが。
続き