今年もこの時期がやってきた。
毎年ダルマスカ騎士団では、それぞれの腕を磨くためと士気を高める為に、格闘競技会が開かれる。普段は剣や槍を振り回す彼等だが、ここでは己の拳と拳をぶつけ合う。
よくわからないけど素手での戦いが基本なのかな?
今回は幼馴染みのラスラが是非見学して行きたいと言ってきた。
私としても、我がダルマスカ騎士団の良いところを自慢していきたいところ。
私とラスラは闘技場のすぐ上からその様子を見守っていた。
「あ、左…避けて!!」
ハラハラと自分の手のひらを握った私を見て、ラスラがこう聞いてきた。
「アーシェはバッシュのファンなのかな?」
「え、えと。そういう訳でも」
「じゃあ、私はウォースラの応援をしようかな」
どもってしまった私に彼は朗らかに笑った。
そう、バッシュとウォースラが対戦相手に当たってしまったのよ。
二人が戦い合うところなんて初めて見たから、つい興奮してしまって。
柔軟な動きで守りが固いバッシュに対して、豪快に技をくり出すウォースラ。
…性格出てるわね。思わぬ発見に私はほくそ笑んだ。
「バッシュ!!逃げてばかりいるな!」
ウォースラのが蹴りを放ちながら咆哮する。
「お前こそ、そろそろキレがなくなってきてるぞ!」
その蹴りをギリギリでふっとかわすバッシュ。
格闘に関してはまったく知識のない私にとっても彼等の強さはよく分かった。
どちらが勝ってもおかしくない、その試合途中。
ラスラが あ の 掛け声を掛けたのよ。
「バッシュ、ウォースラ!勝った方にアーシェがキスをしてくれるそうだよっ!!」
はぁ〜!?何勝手なこと言って…
「な、何!?」
慌てて耳を疑っていたのはウォースラ。
そこに隙ができたのか、彼はバッシュの二段突きにふっとばされた。
天然のバッシュには動揺はなかったみたいね。
なんか妙にくやしいのは何故だろう?
ウォースラはいつもよりさらに眉間にしわが寄っていたが、言い訳はしなかった。
バッシュはというと、何かを待っているようにこちらを見ている。
「殿下、勝ったほうは…という約束ですよね?」
バッシュのひとことで周りがしん…となった。
バッシュ…。ここにはあなたの上司もいるし、私のお父様も見てらっしゃるんですけど。
ウォースラが慌てて、駆け寄る。
「お前、殿下に何要求してるんだ!?」
「しかし、約束は約束ではないか」
その様子に私は可笑しくなって、お腹を抱えてヒーヒー笑った。
いまだかつてこんなコト言える騎士って知らない!
私は手でおいでおいですると、バッシュは微笑んで近寄り、その場にしゃがみこんだ。 …その彼の頬に小さくキスをした。
どよっとする一同の前で私達はクスクスと笑い合った。
側にいるラスラも、いいなぁ、といいながら笑っている。
唯一、ウォースラだけが頭を抱えて大きな溜息を吐いていたけど。
私はそんな彼を見て、言ってあげたわ。
「ウォースラ。そんなに残念がらなくても、今度あなたが勝ったとき同じようにしてあげるから」
「い、いえ!!自分はそのような…」
慌てふためく彼に、大爆笑が起こった。
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