先日、ジャッジ・マスター達が集まる会議で、帝国内で兵やジャッジが戦法や軍での過ごし方、帝国の法律等について相談を受ける窓口を設ける提案が出された。
発案者はラーサー様で、さすがは下々の事まで考えてくださるお方だ、と感心した。
そこまでは良かったのだが。
「では窓口は第10局で設置してくださいね、ザルガバース」
「は?」
「卿を見込んでのお願いです。よろしいですね?」
「…御意」
ラーサー様にあそこまで言われて断れるハズがない。
他のジャッジは面倒が回ってこなくて良かった、という表情だった。
*
窓口に待機していたはいいが、正直部下達にとってどうなのだろう?
仕事のグチや相談など上司に言いにくい事なのではないか?
それに仕事以外の時間にジャッジ・マスターと関わりたいと思う兵も少なかろう。
思ったとおり、誰も来ようとしない。
つかつかつか…
あぁ、あの足音は。また何かに腹を立てたな?
相手が鼻息荒くしてやってくる様子が目に浮かんだ。
「聞いてくれ!ザルガバース」
バンッ!と思いきりドアを開けてドレイスが入ってきた。
「ドレイス、扉の開け閉めは静かにな」
「それどころじゃない!卿に相談を持ってきたぞ」
聞けばガブラスがいつも待ち合わせの時間に遅れるだの、自分はバカにされてるとしか思えないだの…
いわゆるノロケであった。
「このようなこと、卿にしか相談できぬのだ。どうすればいい?」
「本人と直に話し合ってくれ、ドレイス。ここは恋愛相談所ではない」
出された茶を啜りながら、彼女は私の言葉を無視して話し続ける。
どうやら溜め込んだものを吐き出すだけでスッキリするらしい。
「邪魔したな、ザルガバース。また来る」
…来んでいい。私は心の中で呟いた。
*
数時間か経った頃、静かに扉を開ける者がいた。
「どうした、ガブラス。疲れた顔をしているな。第9局も忙しかろう。
…情報収集についての相談か?」
「いや。何故かドレイスが怒っていて、話し掛けても返事をしてくれんのだ」
…こいつもか。
私は大きく溜息を吐いて、吐き捨てた。
「とりあえず、時間には遅れないようにしておけ」
すると目を丸くしたガブラスが言う。
「ひょっとしてドレイスがグチを言いに来たか?…卿にも迷惑かけるな」
自嘲する彼に私はまったくだ、と迷惑そうに言ってやった。
「私はこれからドレイスのご機嫌を取ってくる」
そう言って席を立ったガブラスに私は手をヒラヒラさせて退席を促した。
まったく…こんな調子で4局と9局は大丈夫なのか?
私は急にこの国のゆく末が心配になった。
しばらくしてラーサー様がやってこられた。
「どんな具合ですか?ザルガバース」
「はぁ…」
この現状を言いにくく、苦虫を噛み潰したような顔をする私に、
「ドレイスとガブラスが相談に来ていたでしょう?一緒に2人を応援しましょうね」
そう言ってにっこり微笑む主に、初めからそれが目的だったのか、と頭を抱えた。
「ところで、ザルガバース。私は最近、パンネロさんという少女が気になっていて…」
ザルガバースはこの日を境に胃薬が手放せなくなったとか。