おいでよ どうぶつの森+J

※その名のとうり、「おい森」パロディです。ゲームを知らなくても読めると思います。

〜ドレイス編〜

以前から気になってはいたのだ。人語を話す動物達がいる森。 ガブラスにその話をしたところ、

「ドレイス。卿も案外、ロマンチストなんだな。そこは元、お嬢様といったところか?」
「元ではない。今も良家のお嬢様だ!」

奴がからかうものだから、ついムキになってしまった。
それから数日後、私の休暇にガブラスを無理矢理付き合わせてその森を探しにきた訳だ。 今頃、アルケイディアでは我々が居ない分、ザルガバースが対応に苦労していることだろう。 いつも我々に気を遣って(?)わざわざ申し出て面倒を引き受けてくれるのだ。 ガブラスが言うには、私が強引に引き受けさせた、だそうだが。 ここは有り難く甘えておくことにした。

さて、話を元に戻そう。 森に来たはいいが、この村には人の姿がなくてな…。 送ってくれたタクシーの運転手ですらヒュムではなかったのだ。 たったひとり、ヒュムと見られる人影を見つけて話をすることができた。

「遠いところ、よく来てくださいました。 この村はまだ出来て間もないので、宿が無いんですよ。 私の自宅には私以外、まだ3人住むことができるので、 よろしければ、ここに住んでみませんか?」

行くところも無かったので、我々は彼女の言葉に甘えることにした。

…そうそう、都合のいい話があるわけがない。 私はこの時、少しでも彼女を疑って然るべきだったのだ! 彼女はこの森に住み着く魔女で、動物達が人語を話すのも彼女の影響らしい。 私とガブラスはその夜、とある異変に気が付いた。 そう、あの魔法を掛けられてしまったのだ!!

魔女は私とガブラスに一つづつベッドを与えてくれた。 妙な動物達と話をしたせいか、ガブラスは体力的にというより、 精神的に疲れが出たようだ。 ベッドにゴロリと横になった彼は、すぐに寝息をたて始めた。

「…ガブラス?」

私は折角ひさしぶりに二人きりの夜を過ごせるのに、 すぐに眠ってしまったガブラスに少し物足りなさを感じた。

「ガブラス。…ガブラス!?」

揺すっても叩いてもアグレッサーを仕掛けても起きない。

…おかしい!!ハメられたか!?
部屋の外を見回しても魔女の姿はなく、私は側にあった電話を手に取った。

『どうなさいましたか?』
「どうもこうもない!相方が目を覚まさないのだ! あの女を出せ!このジャッジ・ドレイスが裁く!!」

電話口で怒鳴ったあと、相手は申し訳なさそうに

『あの魔女もそちらのお方も、貴女が起きている間は目を覚ますことはありません。 同じ家に同居するものはひとりが起きている間は眠る仕様なのです』
「…なっ!!」

あっけに取られる私を尻目に相手は話し続ける。

『役所に行き、引っ越しの手続きをとれば…』

ガチャン!!私は怒りにまかせて電話を切った。
もうガブラスの声を聞くことができないのか? 彼の頬をそっと撫でると、掌に彼の温もりが伝わった。 こんなにも近くにいるというのに。遠い世界の人になってしまった感じがする。 傍らで眠る彼は、何も知らずに眠っていた。

「私の自分勝手な行動で…巻き込んでしまった!!」

あまりにも急で残酷な展開に、私はただただ項垂れるだけであった。

ガブラスがあのままではアルケイディアに帰れるはずもなく、 いたずらに過ぎる日々を過ごしていた。 最初は後悔と懺悔の日々を送っていた。 ここで救われたのは、村の住人(みな動物だが)が人当たりがよく、 気さくな者達ばかりだったことだ。

私が眠っている間、当然ガブラスが起きているわけで、 住人達がそのときの様子を聞かせてくれた。 仲良くなった住人の手伝いをすることで、物品を手に入れたりできた。 その中には便せんもあり、ガブラスと手紙のやり取りができるようになったのだ。

これが私には結構楽しみであった。 彼は筆不精というか…。 私はまともに手紙など貰ったこともなく、 こういうラブレターのやり取りに憧れを抱いていたのだ。 さすがの彼も今の状況を打破したいらしく、 便せんの端までいっぱいに書き込んでくれた。

今日も胸を踊らせながらポストを覗き込んだものだ。 私は生活最低限の果物などを採取した後、 仲良くなった住人の家に向かうことにした。

「おはよう、アンヌ」
「アラ…。ドルルちゃんじゃない、ふぅ」

アヒルのアンヌは出会って数日後に妙なアダ名を付けてきた。 まぁ構わないが、ガブラスからそう言われたくないので、 二人の間だけにしておいてくれ、と頼んである。 アヒルながら、彼女は女性らしく、私とガブラスについての相談にも乗ってくれる。

「時間があるなら、クイズに付き合ってよ、ふぅ」
「いいだろう」

アンヌは赤と白の2枚のカードを取り出した。

「おたくが正しいと思う方のカードを指してくれる?」
「承知した」
「では1問目。お父さんとお母さんがケンカした。その時のお父さんの顔色は?」

私はガブラスと喧嘩したときの彼の顔色を思い出し、白を指した。

「正解〜!!ガブラスくんも苦労してるのね、ふぅ」

意味有りげな流し目を送るアンヌに私は次を促した。

「2問目。私がタイプな男性の前に落とすハンカチの色は?」
「フフン。白じゃないか?」
「なかなかやるわね、おたくも実践済みってトコかしら、ふぅ」
「3問目は?」
「コレが答えられたら、何かプレゼントしてあげるわ。 ガブラスくんのふんどしの色は?赤か、それとも白?」

…って、ちょっと待て!!
奴はふんどし派だっただろうか。その前に何故そのことをアンヌが知っているんだ!? しばし葛藤していた私だったが

「赤…か?」

それはないだろうと思いつつ、ドギマギしながら聞いてみた。

「残念〜!!正解はピンクでしたっ。 この場合、おたくは両方のカードを指すべきだったわね、ふぅ」
「…っ!!か、確認してくる!!」
「あ、ちょっと待ちなさいよ、ドルルちゃん! まさか眠ってる彼に…!!ってもう遅いか、ふぅ」

あまりの事に動揺してつい行動に出てしまったのだが… もちろん、このことはガブラスには内密に…な。

***

〜ガブラス編〜

やれやれ、とんでもない事になったものだ。
目が覚めると隣でドレイスが眠っていた。 傍らにあった書き置きで事の詳細が分かった。 先にこの事実を知ったドレイス。 その心情はどうだったのだろう。 おそらく己の事より俺の身を案じて苦悩したに違いない。

何度目かの目覚めを迎える頃には、手紙をやり取りするようになった。 『ハンバーガーびんせん』や『うしがらのびんせん』を選ぶ彼女のセンスに思わず苦笑したが、 これも俺を少しでも楽しませようとする彼女なりの心遣いであろう。

ドレイスがこの村の住人と交流をしているようなので、 彼女の足取りを辿る思いで、俺も村人と話すようになった。 …動物との会話はなかなか慣れないがな。 きちんと動物達と話していなければ、 彼女がふっきん同好会に入っていることに気付かずのままであった。 ムキムキのドレイスなど見たくない…。 本日の彼女への手紙でそれを伝えた。

今日は仕立て屋に行ってみるか。 ドレイスも女だし、衣服に興味があることだろう。 部屋を出る前、スヤスヤと眠るドレイスの顔を覗き込む。

「…お前だけでも元に戻してやる」

こうすれば目を覚ますのでは、という思いでそっと口付けた。 だが、目の前の彼女はただ眠り続けるのみであった。

「いらっしゃいませ〜!!」

きぬよの元気な声が店内に響く。 ここのあさみ、きぬよ姉妹は店を持つまでいろいろ苦労したらしい。 幼いきぬよを支える為にあさみは血の滲むような思いをしてきたと聞いた。 この姉妹を見ていると、自分と兄を思いだす。 …もうあの兄と支え合うことなどないのだろうけど。 遠い目をして考えこんでいると、きぬよが下から俺の顔を覗き込んだ。

「ガブラスさん、どうしはったん?それ、ドレイスさん用に買いはるん?」

はっとして顔を上げると、俺は女性もののドレスの前に立っていた。

「い、いや…」

焦る俺を見てきぬよは説明をしだす。

「きっと似合いはるよ、ドレイスさん。 『じゅんぱくのドレス』には『じゅんぱくのヴェール』をセットにするんよ」
「これは婚礼衣装ではないか」
「ドレイスさん、もう33才なんよね? そろそろこういうのん、渡されるの待ってはるん違うの?」
「俺達はまだそこまでの関係ではない」
「そう思ってるんは男の方だけで、女は貴方の一言を待ってるんよ」

強い口調で言うきぬよにしどろもどろになっているところに、 あさみの助け舟が入った。

「きぬちゃん、お客さんに失礼よ。ガブラスさん、すいません」
「ゴメンお姉ちゃん、ちょっと言い過ぎやね。 で、ガブラスさん、それ着てみるん?」
「着るわけあるか!!」

俺の怒号は村中に響き渡ったそうだ。

それから数日後、村の祭りの日がやってきた。 折角の祭りだが、ドレイスと一緒に見て回れないなら楽しくもなんともない。 俺は役所の前に村長のコトブキを見かけ、話し掛けた。

「かれこれこういう事になったのだが、なんとかならないものか?」
「あぁ、それならひとりがこの村から別の村に引っ越せば、同じ時間に起きていられるはずじゃ」
「…それだけか?」
「うむ。ともだちコードがあれば、お互いの村を一緒に探索したりできるぞい。 お主、説明書をちゃんと読んだのか?」

あああああぁ…!!
魔法だの呪いの類いでなくて、本当にただの仕様じゃないか!! ドレイスめ、焦って説明を聞かなかったな!?

俺は家に帰ると猛然と対応策を便せんに殴り書いた。 …まぁ、彼女も悪気があった訳ではないだろうから、 気を悪くしないよう『ラブリーなびんせん』を使ってやった。

次の日、森の動物達と別れ、来たときと同じタクシーでアルケイディアに帰ることになった。 ドレイスが動物達と名残り惜しそうにしていたが、 長期に渡って職務放棄している為、無理矢理連れ帰ることにした。 アルケイディアでの始末書が恐ろしいが…まぁ、今は考えないようにしよう。 タクシーの中ではドレイスが両手にビラリと様々な便せんを広げてニヤニヤしていた。

「見ろ、ガブラス。この便せんの数々!タヌキ商店で買い占めてきたぞ!! …これからもコレで文通が続けられるな」
「言いたいことがあれば、口で伝えればいいだろう?」

わざわざ伝えられる距離にいるのに筆を取る必要性を感じない、と言うと、 ドレイスはたちまち頬を膨らませた。

「そういう問題ではない。私は卿と手紙をやり取りしたいのだ!」
「…そうか、好きにしろ」

これ以上言うと益々機嫌を損ねるので、俺は頬杖を付いて適当に答えた。 文字など、これから帝都に帰れば嫌と言う程書かされるハメになるだろうに。


「…遅いお帰りだな」

さすがに温厚なザルガバースも明らかに不機嫌な様子が見て取れた。

「申し訳ない、ザルガバース。不慮の事故が起きてな。卿はしばらく休んでくれ」

俺とドレイスは、ザルガバースから持ちきれない程に書類を手渡された。 …まぁ、仕方あるまい。 これだけの量の書類で済んだのは、ザルガバースが頑張ってくれたおかげだろう。 労う俺にザルガバースは

「あぁ、あまりの量に手が付かなくなってな。他の者にも手伝ってもらった」

………何?

何か言おうと口を開いたとき、柱の影からあまり見たくない人物が現れた。

「よう、御両人!…婚前旅行に行ってきたそうだな!!」
「うむ。なかなか良いところだったぞ、ベルガ」

気軽に手を挙げて応えるドレイスに、俺は頭を抱えて座り込んだ。 …バレた。 よりによって、こんなヤツに関係がバレた。まぁ薄々気付いていそうだったが。 これから暫くは、これをネタにからかわれるだろう。 キッとザルガバースを睨んでやったが文句は言えない。

「卿達が期間内に戻ってきたら、黙っておいてやるつもりだったんだがな…。 私も自局の仕事が溜まっていたのでね」

フ、と彼は微笑んだ。 まだ何か言いたそうなベルガを連れて、ザルガバースは自分の職場に戻って行った。

はぁ…。 まぁ、悩んだところで何にもなるまい。 諦めて仕事をしに自室に戻ろうとすると、ドレイスが俺をじっと見つめて何かを目で訴えていた。

「どうした、ドレイス。早く戻らんと仕事が片付かないぞ」
「…卿との久し振りの休日だったが、一緒に過ごす事ができなかったな」
「仕方あるまい。きっちり説明を聞いていなかった卿の落ち度だろう? まぁ、普段体験できない生活ができたのだし、それでよいではないか」
「…そうだな。仕事に戻る」

残念そうにしょぼんとする彼女に、俺は憂鬱な気分を忘れて笑いが込み上げて来た。

「ククク…」
「ガブラス!何が可笑しい」
「いや、すまない。 俺の仕事が片付いたら、今夜卿の部屋に伺おうと思うのだが、構わないか?」
「!!…うむ。私も早く終わらせて待っている」

とたんに顔を輝かせた彼女をみて、つい愛おしくなる。 彼女の髪を梳こうと手を伸ばしたとき…

「ガブラス、ドレイス!おかえりなさい」
「ラーサー様!」

こちらに駆けてくる君主を見て、俺とドレイスは跪く。

「あ、2人とも楽にしててください。 卿らから早く動物の森の話を聞きたくて来たんです」
「とてもよい所でしたよ。…よろしければ、私の部屋でゆっくりお話しましょう」

嬉々として体験談を話すドレイスを見ると、この分では彼女の書類も俺が処分しなければならないらしい。 まぁ、彼女のサインを真似るのにも慣れたが。

「いいなぁ…。私も動物の森に行ってみたいです」
「では、私とガブラスが護衛して一緒に参りましょう。いいな、ガブラス!」

2人の楽しそうな表情をみて、苦笑しながらも俺は承諾してしまった。


どうやら、近々また行くことになりそうだ。
あの、不思議な動物達の居る森へ…



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